鴨南蛮と割子そばの八雲庵

八雲庵の最大の魅力は、やはりその**「割子そば（わりごそば）」**です。朱塗りの丸い器に盛られた冷たい出雲そばを、薬味（ネギ、海苔、もみじおろしなど）を加えてから、直接出汁をかけて食べる独特のスタイルです。一段ずつ味わいながら、最後に出汁を飲み干すのが通の食べ方とされています。八雲庵の蕎麦は、蕎麦本来の香りともちもちとした食感が特徴で、風味豊かな出汁との相性が抜群です。正直なところ、この独特の食べ方は初めての方には新鮮で、旅の思い出になること間違いなしです。

店舗は、松江城の堀川沿いに位置しており、窓からは風情ある堀川の景色や、美しい庭園を眺めることができます。特に、天気の良い日や新緑・紅葉の季節には、その景観が料理をさらに引き立ててくれます。建物は、かつて松江藩の剣術指南役・大石源内の武家屋敷跡を活用したもので、趣のある佇まいも八雲庵の魅力の一つです。店内は落ち着いた雰囲気で、ゆっくりと食事を楽しむことができます。

八雲庵は、松江城や堀川遊覧船乗り場からも近く、観光ルートに組み込みやすい立地です。松江城散策の合間に、あるいは堀川遊覧船の乗船前後に立ち寄るのに最適です。地元の人々にも愛される老舗の味を、旅の思い出に加えてみてはいかがでしょうか。


【豆知識】
・「割子そば」は、出雲そばの代表的な食べ方の一つで、江戸時代に弁当として重箱に詰めて持ち運んだのが始まりとされています。

・出雲そばは、蕎麦の実を殻ごと挽く「挽きぐるみ」という製法のため、色が黒っぽく、香りが強いのが特徴です。

・店名の八雲庵は、松江ゆかりの文豪・小泉八雲（ラフカディオ・ハーン）にちなんだものです。