難攻不落の山城 - 月山富田城跡

月山富田城は、中世城郭から近世城郭へと変貌を遂げた歴史を持つ城で、その特徴は山全体の地形を巧みに利用した縄張りにあります。麓から山頂にかけて、複数の曲輪（くるわ）や堀が段々に配置されており、敵の侵入を阻む工夫が随所に凝らされています。特に、主郭部である本丸や二の丸、三の丸へ続く「七曲がり」と呼ばれる急な坂道は、当時の攻防の激しさを偲ばせます。山中鹿介（やまなかしかのすけ）の銅像が立つ太鼓壇（たいこだん）や、広大なスペースを持つ千畳平（せんじょうだいら）など、見どころも豊富です。

この城は、尼子経久の時代に最盛期を迎え、中国地方にその勢力を広げました。しかし、1566年（永禄9年）に毛利氏に攻略され、以降尼子氏の勢力は大きく衰退しました。その後は毛利氏の支配下に置かれ、関ヶ原の戦い後には堀尾氏が城代を務めるなど、近世城郭としての整備が進められました。1611年（慶長16年）には堀尾氏が松江に新たな城を築いたため廃城となりました。

現在、月山富田城跡はハイキングコースとしても整備されており、麓の安来市立歴史資料館から山頂まで、約1時間ほどの道のりです。道中には城の遺構を解説する案内板が設置されており、戦国時代の歴史に思いを馳せながら散策できます。山頂からの眺望は素晴らしく、かつての城下町や飯梨川（いいなしがわ）を一望でき、天気が良ければ遠くに日本海も望めます。